COLLECTION

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《東海の朝》

制作年 1940年代頃
材質技法 絹本着色
横山大観
作品解説
幹の太い黒松が背を低くして、強風に耐え、堅牢な岩礁に寄せては返す大きな白波と対峙する。荒々しい太平洋の風に揉まれながらも、餌を求めて小さな鷗たちは飛び交う。こうした厳しい状況ではあるが、今日の始まりを告げる希望の朝日が昇ってきている。ここは、横山大観が岡倉天心とともに移り住んでいた茨城県五浦の海と考えられる。後年、若き日の苦難を思い出してよく描いた画題のひとつである。長女を亡くし、家を火災で失い、経済的に窮乏していた時期であった。人生の荒波に遭遇したことを忘れないための画題でもあったろう。
本作は、太平洋戦争の始まっていた1940年代頃の作で、文化勲章を受章し、帝国芸術院会員となっていた大観が、山海二十題を描きその売上の全てを陸海軍に寄付するなど国のために尽くそうとしていた頃のものである。自らの人生を振り返りながら、国民をも鼓舞しようと描いた作品だと考えられる。
東海の朝