COLLECTION
コレクション
《花瓶 「フランスの薔薇」》
- 作品解説
-
エミール・ガレの後期のガラス作品。ガレは、1901年、ナンシー中央園芸協会の会長を退任するジュール=レオン・シモンのために、脚付きの大杯を制作した。そのモチーフとして採用されたのが、「フランスの薔薇(ロサ・ガリカ)」である。これは、フランス北東部の街メスを見下ろすサン=カンタン山にしか咲かないといわれた野バラで、メスに生まれ、バラの研究に尽力したシモンへのオマージュでもあった。このモチーフは、その後、他の花器や香水瓶などに展開されていて、本作もそのひとつ。
それは、太く短い脚に、徳利状の器が乗る花瓶である。素地は、金属酸化物により深緑や黄緑を発色させた透明ガラスに、ピンクの色ガラスを被せたもの。その表面に、マルケトリ技法によりバラの枝葉を表し、枝の先端に真紅の色ガラスを3つ熔着して蕾を表現している。素地の優しい色調とは対照的に、薔薇のもつ刺々しさが作品に重厚な印象を与えている。