COLLECTION
コレクション
《黒御袍立像御雛》
制作年 1975年頃
材質技法 木、布
六世大木平藏製
材質技法 木、布
六世大木平藏製
- 作品解説
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雛の形式には、立雛(紙雛)と内裏雛(坐雛)がある。江戸初期の17世紀半ばすぎから三月の節句行事として雛遊びが定着すると、こうした雛が飾られるようになった。貞享5年(1688)の『日本歳時記』では、立雛と内裏雛が一対ずつ飾られた図もみられる。立雛は、ほとんどが紙製の最も古い形式であり、内裏雛には、寛永雛や享保雛、有職雛などの形式がある。本作は、有職雛の系譜にある。有職雛とは、公卿の装束を考証して製作した雛で、束帯や衣冠、直衣の姿をし、江戸期には雛市で売りに出されず、公家衆の注文で製作されてきたものである。
本作の男雛の装束は、公卿の正装で、表袴(うえのはかま)を穿いて、上衣の黒袍(くろほう)をまとう。頭に冠を被り、足には襪(しとうず)を履くとともに、手に笏(しゃく)を持つ。丸平大木人形店の立像のほとんどが黄櫨染(こうろぜん)の御袍で、黒袍は珍しく、六世も本作を含めて三体しか制作していないという。黒袍の立像は、有職の装束の実に即してなお人形として有職にはない虚の華やかさを取り入れたものである。
女雛の装束は唐衣裳(からぎぬも、十二単)という宮中における女性の正装姿である。小袖(こそで)、打袴(うちばかま)を着けた上に、単衣(ひとえ)・五衣(いつつぎぬ)・打衣(うちぎぬ)・表着(うわぎ)・唐衣(からぎぬ)を着て、さらに裳をつける。表着には向松喰鶴丸文(むかいまつくいつるまるもん)、唐衣には浮線菊(ふせんぎく)の文様が施されている。檜扇(ひおうぎ)には、松、梅、橘が描かれ、六色の縒り紐による糸花(いとはな)を長くたらす。髪は大垂髪(おすべらかし)に結い、釵子(さいし)をつけて、顔には二重眉を作っている。
